ホビー月刊誌『鉄道模型趣味(TMS)』への寄稿は、昨年末に開催した個展がきっかけでした。
会場に足を運んでくださったのが、機芸出版社 取締役編集長の 名取紀之 氏です。作品をご覧いただいた帰り際、「よかったらTMSで記事を書きませんか?」と声をかけていただきました。
模型専門誌にイラストで寄稿することに、当初は少なからず戸惑いもありました。しかし後日、名取氏はこう語ってくれました。
「イラストは“2Dの情景作り”ですし、創作という意味では模型と同じです。自信を持ってやってください。」
その言葉に背中を押され、寄稿を引き受ける決心がつきました。
テーマは、旧晴海鉄道橋と東京都専用線、そして晴海界隈に残る廃線跡。限られた時間の中で、これまで描きためてきた作品から候補を選び出し、全体構成を組み立てていきました。
記事は前後編の2回構成。それぞれにカラー6ページという、非常に贅沢な誌面が割り当てられました。イラストを大きく、美しく見せたいという名取氏の配慮によるものです。
結果として、イラストと文章が拮抗する、視覚的にも読み応えのある構成が実現しました。
原稿制作のタイミングは、奇しくも本業での海外出張と重なっていました。
移動の合間やホテルの一室で、原稿の修正やレイアウト確認を行う日々。決して楽な環境ではありませんでしたが、異国の地で鉄道の記憶を辿る作業はどこか非日常的で、今振り返れば印象深い時間でもあります。
前編の校了を終えると、間を置かず後編の制作へと移行しました。
後編の制作期間はゴールデンウィークと重なり、比較的まとまった時間を確保することができました。この余裕を活かし、新規イラストを数点描き下ろすことにしました。
既存作品の再構成に加え、新たな作品を加えることで、これまでご覧いただいている方にも新鮮な視点で楽しんでいただける内容を目指しました。
制作において最も苦労したのは、内容の専門性でした。
『鉄道模型趣味(TMS)』の読者層は非常に知識レベルが高く、一般向けの平易な解説では物足りません。一方で、専門に寄りすぎると読みづらくなるため、そのバランスを探る作業にはなかなか神経を使いました。
この点においては、名取氏の的確な助言に何度も助けられました。編集者としての視点と豊富な知識が、記事全体の精度を引き上げてくれたと感じています。
こうして完成した記事は、雑誌として世に出るだけでなく、国会図書館やバックナンバーとして半永久的に保存されていきます。
自分の仕事が長く世に残っていくという事実に、あらためて大きな責任と喜びを感じています。
名取氏との初めての共同作業は、忘れがたい経験となりました。無事に刊行を終えた後、オンラインでのやりとりが中心だった名取氏に直接感謝をお伝えしたいと思い、面会をお願いしてお会いすることができました。
このプロジェクトは、私にとってひとつの節目であり、大きな意味を持つ活動となりました。
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