9年ぶりの改訂、新刊制作
9年前に発行した、廃線跡を題材にしたイラスト同人誌『イラストで巡る東京都港湾局専用線今昔』。
いつか改訂版を作ろうと思いながら、気がつけば9年もの時間が経っていた。本当は5年くらい経った頃に取り組むつもりだったのだが、日々の仕事や家のことに追われ、なかなか手をつけられずにいた。
そうこうしているうちに、旧晴海鉄道橋も2025年に遊歩道として生まれ変わり、題材にしてきた廃線跡も姿を変え、いよいよ更新しなければならない状況になってきた。そんなこともあり、ようやく重い腰を上げることにした。
目標に定めたのは、数か月後に開催されるコミックマーケット。私の場合、明確な締切がないと、どうしても作業に緊張感が生まれない。まずは発表の場と期日を決め、そこに向けて制作を進めることにした。
9年間で変わった街、変わった視点
まずは、9年が経過した街の様子を改めて見直し、2026年にふさわしい内容へと更新することにした。
街の変化はもちろんだが、私自身の視点も9年の間にずいぶん変わっている。同じ場所を題材にしても、伝えたいことや描きたいものは以前とは違ってきている。それらをすべて実現するのは難しいが、優先順位をつけながら取り組んだ。
特にこの本はイラストが命である。だからこそ、イラストはできる限り刷新したかった。
物語を加え、誰もが楽しめる本に
もう一つ、今回こだわりたかったのが、物語の挿入である。読む人が題材に愛着を感じられるような物語を盛り込みたいと思った。
前回掲載した漫画も刷新し、今回は1ページ読み切りの漫画を4作品収録することにした。
単なる解説本にはしたくない、というのも理由の一つである。扱っているテーマはどうしても専門性が強くなるため、漫画を通して、鉄道に詳しくない人にも楽しんでもらえるようにしたかった。
知識がなくても物語を楽しめて、読み終えたときには、題材となった鉄道や街に少しでも興味や愛着を持ってもらえる。そんな本を目指した。
締切との戦い、そして入稿
気合いを入れて制作に臨んだものの、いざ始めてみると、やはり時間が足りない(笑)。何より時間がかかるのが、なんといってもイラストや漫画の制作である。普段の仕事を続けながら、その合間を縫って新しい絵を描いていく。最初に立てた予定どおりには、なかなか進まない。
残された時間と必要な作業量を何度も照らし合わせながら、「ここは描き直す」「ここは新規で描く」「ここは今回は諦める」と、現実的な制作計画を何度も練り直した。
コミケの入稿締切が近づくにつれて、だんだん余裕もなくなっていく。最後の方は、もう半ばやけくそである(笑)。それでも何とか作業を進め、最終的には締切ぎりぎりで入稿することができた。
もちろん、入稿を終えてからも「あそこはもう少し描きたかった」「あの話題も入れたかった」と思うところは残っている。100%満足できるかと言われれば、決してそうではない。それでも、今の自分にできることはやった。まずは一冊の本として形にできたことに、ほっとしている。
長かった制作作業から、ようやく少しだけ解放された気分だった。
そして、コミケ当日
迎えたコミックマーケット当日。新刊「イラストで甦る都営臨港線」は1日で約300部を販売することができた。正直なところ、これだけの部数を用意して、ちゃんと買っていただけるのだろうかという不安もあったので、手に取ってくださる方々の姿を見て、まずは安堵した。
9年ぶりの改訂ということで、限られた時間の中で想像以上の労力がかかったが、多くの方に作品を届けることができ、ひとまず今回の取り組みを無事に終えることができた。
同人誌については、この5年ほど、体調や環境の事情もあって、思うように取り組めない時期が続いていた。そうした中で、今回の新刊制作は、自分の同人誌活動が再び息を吹き返したことを示す一つの節目になったと思う。
9年前に描いた風景を、現在の視点で見つめ直す。そして、変わり続ける街と、そこに残された鉄道の記憶を、改めて一冊にまとめる。
今回の新刊制作は、過去の作品を更新することで初心に立ち返ると同時に、豊洲機関区の新たな展望を示す機会にもなった。ここから派生していく今後の活動が楽しみである。
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